投稿日時:2016年6月18日 カテゴリー:コラム
今回は投資について。
簡単な説明ですと、ポップスでは、作曲家のデモ音源をレーベル等の担当者が聴き、採用されたらリリースとなります。
その為にデモ音源に歌を入れます。これを仮歌といいます。
仮歌を担当するのは、作曲家本人かボーカリストです(プロ・アマ問わず)。
「勉強になるから」等の理由で、無料で参加してくれるボーカリストもいますが、ギャラをお支払いするのが一般的で、ワンコーラス2,000〜5,000円でしょうか。
企業から依頼される、アーティストが覚える為などで使うフルコーラスの仮歌は1万円以上の場合もあります。
<作曲家とボーカリストの値段交渉>
音楽業界の不況で、レコード会社もマネジメント会社も音楽家も、みんな利益が減りました。
音楽家の大半が歩合制なので特に深刻です。
作曲家は何曲も自腹でギャラを払うので、年間の仮歌代は高額です。実はこの深刻さは、ボーカリストには伝わっていないことも多いです。
ボーカリストによって、値段交渉に応じる方と応じない方が当然います。プライドや自分の価値を下げない等の理由があります。
しかし、最初から値段を下げず断るのはボーカリストにとって得策だとは思いません。
その作曲家との繋がりで仕事が増えることはよくありますから。
また、もしも仕事や利益を求めて仮歌をやっている状況があるのなら、その為の努力はしないともったいないです。
仕事を得る為の努力は妥協ではありません。
ギャラ4,000円の方を例にします。
- 断れば0円。
- 初回だけ1,000円下げて利益3,000円。その後4,000円でも良いと思われたら利益継続。
- その作家さんにはずっと3,000円で対応。その後、利益継続の可能性は高い。
この3つのうち、どれを選ぶかは当然人によります。
2番を選ぶデメリットが多くあるとは思えません。たった1回の割引ですし、作家はその歌が気に入れば4,000円でもまた依頼します。
この例を、たった1人の作家との関係で1年単位で考えます。
作家は月に3曲書く。
↓
初回だけ1,000円引きにし、2曲目からは4,000円。
↓
毎月3曲の依頼が来るようになる。
↓
1ヶ月だと4,000×3=12,000円。1年だと、12,000円×12=144,000円。
初回は1,000円引きなので、合計143,000円にもなります。
作家から、2回目以降も4,000円は厳しいと言われたので、ずっと3,000円で了承したら下記。
1ヶ月だと3,000×3=9,000円。1年だと、9,000円×12=108,000円。
これらは、各方面で非常によくある例です。曲調によりどのボーカリストに頼むか決めるので、毎回同じボーカリストに頼むとは限りません。
しかし、ボーカリストは複数の作家とやり取りするのだから、変動する利益はむしろ10万どころではありません。
1曲の採用を勝ち取る為に、何曲も書くのが作曲家なので、当然不採用の方が多い。
世に出ている曲よりも何十倍?何百倍?も、不採用の曲のが多いということですね。
つまり、企業との仮歌よりも、作曲家個人との仮歌にそれだけ沢山のチャンスがあるとも言えます。
作家とのギャラ交渉はビジネスライクでも構いません。「投資」の視点はオススメです。
千円札1枚失うことは、プライドを捨てるわけではないのですから。